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東京高等裁判所 昭和47年(ラ)747号 決定 1973年1月30日

抗告人 鄭ト相

右代理人弁護士 荒井秀夫

同 古川祐士

相手方 中央特殊冶金株式会社

右代表者代表取締役 加藤和夫

主文

1、原決定を取り消す。

2、前橋地方裁判所執行官は、同裁判所太田支部昭和四三年(ケ)第五号不動産競売事件について、別紙目録記載の不動産に対する相手方中央特殊冶金株式会社の占有を解き、これを競落人鄭ト相に対し現実に引渡せ。

3、本件申立につき生じた費用は、すべて、相手方の負担とする。

理由

一、抗告人は、主文第一、二項と同旨の裁判を求めると申し立て、その理由として別紙抗告人の主張に記載のとおり主張した。

二、記録添付の本件競売の目的物件(以下「本件物件」という。)の登記簿謄本、前橋地方裁判所太田支部執行官斉木竹次郎の賃貸借取調報告書、弁護士古川祐士の陳述書、その他本件の記録を検討すれば、本件物件について本件競売申立の登記がなされたのは昭和四三年八月五日であること、墨田製鋼株式会社は同年一〇月頃から期限の定めなく所有者である株式会社三興製鋼所(本件根抵当権の設定者である館林製鋼株式会社から本件物件を買い受け、本件競売申立当時にはその所有者であった者)から本件物件を賃借してその引渡を受けたこと、相手方中央特殊冶金株式会社はその後に前記墨田製鋼株式会社から右物件の使用を許されてこれが引渡を受け現に占有していること、以上の事実を認定することができる。

右の事実によれば、相手方は、本件物件について前記競売申立の登記がなされた後に、右登記当時の本件物件所有者たる株式会社三興製鋼所から墨田製鋼株式会社を経て右物件の占有を特定承継した者であることが明らかである。

三、そして、記録によれば、抗告人は、本件物件を競落して競落代金を完納し、右物件の所有権を取得した者であることが明らかである。

四、してみれば、抗告人の本件引渡命令の申立は理由があるから、これを認容すべきである。

五、よって、右と結論を異にする原決定を取り消し、抗告人の本件申立を認容し、本件申立により生じた費用は相手方に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 久利馨 裁判官 栗山忍 舘忠彦)

<以下省略>

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